◎医師のセルフ働き方改革のすすめ
医師の世界でも「働き方改革」は進められており、「医師への時間外労働上限規制の適用」は2024年4月からになる予定です。
これにより医師の時間外労働は「原則として年960時間が上限」となります(いわゆるA水準)。
(*「地域医療を確保するための特例(B水準)」や、研修医らを対象とした「技能向上のための特例(C水準)」に該当する場合は年1860時間が上限)
ただ、「年960時間」ということは「一月当たり80時間の時間外労働」になるわけで、これって普通に「過労死ライン」に相当する労働時間なんですよね…
仮に働き方改革が順当に進んで医師の勤務環境が改善した状況になっても過労死ラインで働く想定って、異常だと思います。
(B水準やC水準に該当する場合の上限は過労死ラインのほぼ2倍!)
医師の働き方改革を議論している方々は「医師なら長時間労働しても体を壊さない」とでも言うんでしょうかね?(むしろ人一倍弱そうですが…)
もしくは「医療体制維持のためには医師の犠牲はやむなし」って感じでしょうか?ちょっと勘弁してもらいたいですね…
で、何が言いたいかと言うと「医師は国主導の働き方改革が進むのを待ってないで、各自セルフで働き方改革を進めるべき」ということです。
国の想定している改革では医師は2024年以降も過労死ラインの残業(現状よりはマシだとしても)を免れ得ないんですから。
ちなみに僕自身も医局にいた頃は当たり前のように長時間労働をしていましたが、強制的な医局人事の辛さ等も相まって入局後約5年で退局しました。
医局を辞めてからはホワイトな職場で働いており、週1回の寝当直以外は時間外労働とは基本的に無縁です。
僕は「仕事は大事ではあるが人生のほんの一部に過ぎない」と考えているので、ホワイトな職場で働きつつ余った時間を育児等の自分が好きな事や大事だと思う事に費やしています。
結果、僕自身の人生の満足度は非常に高いので、現状に何かしら不満のある医師は自分の働き方を見直してみることをおすすめします。
◎医師のセルフ働き方改革を進める方法
医師が自身の勤務状況を改善してセルフ働き方改革を進める方法として有力なのは「(他の病院等への)転職」です。
勿論、現在の勤務先の病院の上層部に労働環境改善を訴えても良いのですが、おそらく医師個人が頑張っても思うような成果は出にくいでしょう。
それよりは自分が勤務先を変わることを考える方がリーズナブルです。「他人を変えようとするよりも自分が変わる方が楽」なので。
幸い、医師は基本的に売り手市場ですから転職先は豊富に見つかります。
条件の良い転職先を探したい方は「エムスリーキャリアエージェント」等の医師転職サイトの利用(無料)がおすすめですよ。
参考記事:エムスリーキャリアの評判は?医師転職サイトを徹底比較!
なお、医師の転職先は病院とは限りません。
臨床医以外にも産業医やメディカルドクター(製薬会社勤務)、行政職等もあり、産業医等の求人も医師転職サイトに掲載されています。
医師の転職-臨床医以外のおすすめの働き方と注意点のページも参考にして、様々な働き方を検討してみてください。
また、医師の中には長時間労働をしている方も多いかと思いますが、そうした働き方は短期間での「燃え尽き症候群(バーンアウト)」に繋がりかねません。
そうではなく、もう少し余力を持ってストレスが少ない状態で長年にわたって働き、「細く長く」という形で医療や社会に貢献する道もあると思いますよ。
かつて長時間勤務していた頃は日々120%の力を出して余力もなかった。今は日々70-80%くらいの力で余力を持って働いてるけど、これくらいだと体調も診療の質も両立できている自覚あり。
120%の力だと5年で燃え尽きてたかもしれんけど、70%の力なら10年、20年と社会に貢献もできると思う。細く長くだね。— はぴえすた (@ishitenshoku777) July 12, 2019
◎責任感から医局や病院を辞められない医師へ
時に「医師が退職して病院や診療科が閉鎖になった」とのニュースを見聞きすることがありますが、まだ閉鎖までは至らなくても近い状態の病院は少なくないと思います。
こうした状況にいる場合、責任感の強い方だと「自分が頑張らないと地域医療が大変なことになるから辞める訳にはいかない」等と考えてしまうのかもしれませんね。
ただ、個人的には一介の医師が「自分が地域医療を守らなくては」みたいな重責を負う必要はないと思います。
そんなのは個人の医師の頑張りでどうにかなるレベルを遥かに超えていて、自治体や政府、国民等も含めた社会全体で考えるべき問題ではないでしょうか。
僕は余力を持てる範囲で働く事にしてるけど、仕事が好きで長時間労働も辛くない人はそれはそれで良いのかもしれない。
ただ「辛いけど自分がやらなきゃ…」みたいな使命感で追い込まれてる人は体を壊す前にお止めなさいよ。社会制度の維持なんて巨大な物は一介の労働者が背負いこむには重過ぎますよ。— はぴえすた (@ishitenshoku777) July 12, 2019
医師が不足しているなら増やす必要があるし、偏在が問題なら解消に向けた対策や政策を打ち出す必要があります(医師の少ない地域や診療科の報酬を上げる等)。
また、それらにコストがかかって金銭的負担が増えるなら、国民もそれを許容する覚悟が必要なはずです。
そうしたことを議論すらせずに医師一人の頑張りに頼った結果、地域医療が守れないならそれは大きな意味で「社会が望んだこと」とすら言えると思います。
少なくとも末端の労働者である一介の医師が責任を感じるような類の問題ではない気がしますよ。
医師不足や偏在は政治や行政の失策だと思うので、現場の医師がその尻拭いをすべきとは個人的には思わんね。進んで尻拭いする医師は立派かもしれんけど、それはあくまでボランティア。ボランティアなしでも成り立つ体制やルールの整備がお偉いさんの仕事でしょ。ルール内で動くからちゃんと整備してよ。
— はぴえすた (@ishitenshoku777) February 8, 2019
また、地域医療も大事ですが医師自身の健康や人生も当然大事なはずですしね。
ちなみに僕自身は「仕事より家庭重視」の生き方をしており、自分の人生に満足しています。
この辺りの考え方は入局後5年で医局を辞めた理由-医師の仕事と家庭のバランスのページにも書いているので興味のある方はご覧になってみてください。
◎おわりに
医師のセルフ働き方改革について書いてみました。
辛い状況で働いている医師の方の参考になれば幸いです。
なお、「医局を辞めたい」等とお考えの方は医局の辞め方マニュアル-医師の転職の方法や注意点-のページも参考にしてみてくださいね!