◎「医者を辞めたい」から何とか持ち直した医師の体験談
医師の皆さんは「医者を辞めたい…」と感じることはありますか?
ちなみに医師を対象としたアンケートによると、「医者を辞めたい」と感じたことのある方の割合は概ね4割程度のようです。
この割合を多いと見るか、少ないと見るか…?
なお、僕は入局して約5年で退局したのですが、退局する前の時期には「医局を辞めたい」に留まらず、「医者を辞めたい」とまで感じていました。
そして結果的に医局は辞めて勤務先の病院も変わったのですが、医者は辞めずに現在に至っており、今は医者を続けられていることに満足しています。
そんな僕ですが、当ブログ記事ではかつての自分が抱いていた「医者を辞めたい」という考えが変わったきっかけや、「医者を辞めたい」と思った時にやって良かったこと等を紹介します。
かつての僕と同じように「医者を辞めたい」とお悩みの方の参考になれば幸いです。
◎医者を辞めたいと思うようになった原因
僕が医者を辞めたいと思うようになった原因や経緯はシンプルで、当時はとにかく激務でストレスフルな働き方だったからです。
特に、卒後3年目に入局(某マイナー科)した後から徐々に仕事のストレスが溜まり始めていました。
別に一般的な医師と比べて極端に多忙というわけではなかったと思いますが、毎日の残業やオンコール等がボディブローのように効いてくる日々でした…
また、医局人事で毎年のようにあちこちの病院に回され、その度に引っ越したり、職場の人間関係を一から築き直したりするのも嫌でしたね。
そんな毎日を過ごす中で、僕の頭に浮かんだのは「医局を辞めたい」より先に「医者を辞めたい」だったと思います。
何か直接の大きな引き金があったわけではなく、日々蓄積していたものがとうとう限界に達したという感じです。
その時点で「医者を辞めたらどうやって生計を立てようか」等は具体的には考えきれていませんでしたが、もうとにかく仕事から逃れたかったのです。
(*何なら「(投資の素人なのに)FXで生計を立ててやろうか」等と半ば本気で思ったりしました。今思うとあまりに無茶なのですが、それくらい追い詰められていたのです…)
そして、「医者を辞めるなら医局にも伝えないとな」と思い、退局の約半年前に教授とも直々に話をしました。
(*ただ、教授には「医者自体を辞めたい」とまでは相談せず、「医局を辞めたい」という相談にしたと思います)
教授は驚きつつも業務負担の軽減の提案(当直やオンコール等を減らす)をしてくれたので、しばらくは業務を減らしたまま勤務をしてみたのですが…
僕の「医者を辞めたい」という気持ちは変わりませんでした。
業務を減らしてもらった時期は少しは楽になりましたが、業務の負担云々ではなく、根本的に何か折れてしまったような感じがしていたのです。
そして、一つの区切りとして年度末の3月まではなんとか勤めた末、退局の運びとなったのでした。
◎医局を辞めて退職した後の生活状況
医局を辞め、常勤だった病院を退職しましたが、その後すぐに常勤医として勤めることはしませんでした。
当時は本気で「医者を辞めよう」と思っていたので、再就職先の病院も確保はしないままだったのです。
ただ、個人的に当直に行っていた病院から引き続き当直(基本的に寝当直で、1回数万円でした)をお願いされていたため、そちらのみ月に数回行って生活費の足しにしていました。
この時期はたまに寝当直をするくらいだったので、ほぼ「医者を辞めた」状態だったと思います。
しかし、退局の翌年には一念発起して再び常勤医として働き始めることになったので、「医者を辞めた」状態だったのは結果的には約9ヶ月ということになります。
では、一度「医者を辞めた」状態からなぜ再び常勤医の道に戻ったのかを書いていきます。
◎「医者を辞めたい」状態から再び医者に戻った理由
「医者をほぼ辞めた状態」から再び医師として働き始めることになった大きな理由はシンプルに「お金」です。
(「やっぱり患者さんの役に立ちたくなった」とか、そういう格好良いものでは全然ありません…)
特に、退職した後の住民税や健康保険料の高さには正直驚きました。
と言うのも、住民税や健康保険料は前年の所得に応じてその年の支払額(1年間分)が決まるので、退職して収入が減っても、それらの支払額はしばらく減らないのです。
(*退職して所得が減ると、その翌年の住民税等が安くなります)
特に健康保険料はそれまで病院側が半分負担してくれていた(=労使折半)のが、退職後は全額自分で払うことになるので支払額は2倍に増加します。
そして僕の場合、退職前の年収は約1000万円でしたが、退職後は月に数回の寝当直のみだったので年収換算では200万円程度でした。
「年収200万円の状態」で「年収1000万円相当の住民税や健康保険料」を支払っていると、お金がどんどん減っていった記憶があります…
また、常勤医でなくなったことで年金も厚生年金から国民年金に変更になり、将来の年金額に不安を覚えたということもあります。
(*将来の年金に全面的に頼るつもりはないですが、年金支給額は減額されることはあっても0にはならないと思っています)
退局してしばらくは「金銭的な不安」よりも「辞めたがっていた仕事から逃れられた安堵」の方が大きかったのですが…数ヶ月も経つとこれらが逆転しました。
仕事から離れた直後は若干麻痺していた将来への金銭的な不安が現実的なものとして感じられるようになってきたのです。
まあ、こんなことは医局を辞める前からいくらでも想定できたことではあるのですが、当時はそんな余裕すらなかったのです…
そんなこんなで、退局して数ヶ月経った頃に再就職先を探し始め、近場の病院で再び常勤医として働き始めて現在に至ります。
これが「医者を辞めたい」状態から再び医者の道に戻った理由です。
では次に、「医者を辞めたい」と思った時に自分がしておいて良かったことについても紹介していきます。
◎「医者を辞めたい」と感じた時にしておいて良かったこと
自分が「医者を辞めたい」と感じた頃を振り返って、当時しておいて良かったことは大きく次の2つです。
辛い状況であることを上司(指導医や教授等)に相談すること
他の職場での待遇(給与、当直の有無等)を調べて知っておくこと(→「医師転職サイト」をうまく利用する)
(*医師転職サイト:名前の通り、医師の転職を支援してくれるサイト。数万件もの医師の求人や転職に役立つ情報等が掲載されていたり、専任のスタッフが転職の相談に乗ってくれたりする)
では、これらを順番に詳しく解説していきます。
◎医者を辞めたい時→まずは上司にしっかり相談する
医者を辞めたいほど辛くなってしまった時は、まずはしっかり上司に相談しましょう。
できれば、辛さがピークになる前の時期にやんわりとでも相談しておいた方が良いと思います。
(「最近休んでも疲れがとれなくて…」等)
僕の場合も教授に相談することで、業務負担の軽減をしてくれることになり、その点は助かりました。
ただ、残念なことに教授から業務軽減をしてもらった時には既に「辞めたい気持ち」がピークに達してしまっていたのです。
そのため業務が減っても「医者を辞めたい」気持ちはもはや変わりませんでした。
もし周囲にもっと早い段階で相談できていれば、一時的に業務軽減の処置をしてもらうこと等によっていずれは元の状態まで戻れることも期待できたかもしれませんね。
気持ちがピークに達してしまう前に、まず身近な指導医や先輩医師に話をすることが大事であったことは今ならわかります。
まあ、個人的には過去のことを悔やんでいるわけでもないですが、経験者として他の方に助言するとしたら上記のようになるでしょう。
◎医者を辞めたい時→他の職場の待遇を調べて知っておく
医者を辞めたいと思った時にしておいて良かったもう1つのことは「他の職場の待遇を調べて知っておくこと」です。
そして他の職場の待遇を調べるのに役立ったのが、医師の求人情報が豊富に掲載されている「医師転職サイト」でした。
僕が初めて医師転職サイトに登録したのは退局するより随分前のことです。
確か、サイトへの登録でギフト券等がもらえるキャンペーンがあり、その際にギフト券目当てでいくつかの医師転職サイトに登録(無料)した覚えがあります。
その時は大学病院で勤務していて転職の予定はなかったのですが、医師転職サイトに登録したついでに自分の科の求人情報等を何気なく見ていたのです。
「近隣の病院でもこんなに高い給料で雇ってくれるんだなあ」なんて思いつつ、その情報を直接活用する機会はありませんでした。
ただ、その数年後に退局した際には、その時に医師転職サイトで得た情報が役立つことになりました。
(*医師転職サイトに登録後は定期的にメールで自分の科の求人情報等を紹介してくれるため、それらも一応見てはいました)
当時は「医者を辞めたい」一心で再就職のことまでケアしきれませんでしたが、「ここを辞めても近くの病院で雇ってくれる所はあるだろう」という思いは心のどこかであったと思います。
もし僕が医師転職サイトに掲載されている求人情報等を全く知らずにいたら、再就職への大きな不安から退職や退局まで至らなかったかもしれません。
「今の病院を辞めても他に働き口はある」と知っていることが、当時の自分にとって1つの安心材料となったことは間違いないです。
よって、今「医者を辞めたい」と感じている方には「医師転職サイトで事前に求人情報等を集めておくこと」をおすすめしたいと思います。
ちなみに当ブログでおすすめの医師転職サイトは業界最大手の「エムスリーキャリアエージェント(m3.comと同じ運営会社)」です。
(*「エムスリーキャリアエージェント」に登録している医師は30万人以上もおり、同社によると転職希望医師の登録実績はなんと11年連続1位とのことです)
参考記事→エムスリーキャリアの評判は?医師転職サイトを徹底比較!
◎「医者を続けるのがつらい」と感じている方へ
当ブログ記事を読んでいる方の中には「自分は医者に向いてない」「医者にならなきゃよかった」等と、医者になったことを後悔している方もおられるかもしれません。
かく言う僕自身も別に自分が医者に向いているとは思いませんし、実際に一度は医者をほとんど辞めていました。
(*結果的には約9ヶ月で常勤医に戻ったので、一時的な「休職」という方が適切かもしれません)
ただ、その後に「金銭的な不安」という現実的な理由があったのも確かですが、再び医者の道に戻ることはできました。
そして、一時的に休職したことは消耗していたエネルギーの回復にも役立ちましたし、自分と同様に休職した患者さん等への対応も、それまでより親身なものへ自然と変わりました。
長い人生の中で一時的に休職したとしても、そこから得られる経験もあるわけですし、「無駄な期間でもなかったな」と今では思っています。
「辛い時には一休みして回復したらまた戻る」というのも長い目で見ると有効な手ではないでしょうか。
かつて長時間勤務していた頃は日々120%の力を出して余力もなかった。今は日々70-80%くらいの力で余力を持って働いてるけど、これくらいだと体調も診療の質も両立できている自覚あり。
120%の力だと5年で燃え尽きてたかもしれんけど、70%の力なら10年、20年と社会に貢献もできると思う。細く長くだね。— はぴえすた (@ishitenshoku777) July 12, 2019
◎おわりに
「医者を辞めたい」という考えが変わったきっかけや、「医者を辞めたい」と思った時にしておいて良かったこと等を自身の体験も踏まえて紹介しました。
今現在、「医者を辞めたい」と悩んでいる方にとって何かしら参考になれば幸いです。
なお、医局を円滑に辞めて転職することを検討している方は以下のページもご覧になってみてくださいね。